10月、タイに出張してきました。2年前から続いた大きな個人住宅が完了し、お祝いを兼ねて挨拶してきました。
なにしろ、大きな個人住宅です。基本的に夫婦二人だけで住みます。全部で、6棟でなる住宅の総建築面積は4,000m2を超えます。建物にはそれぞれ用途がありますが、図面でみるだけでなく、実物は圧巻でした。すべて総ヒノキ造りです。シロアリ対策、風対策などは思いつく限り行いました。オーナーさんにも大層喜んで頂き、ありがたい限りです。設計デザインはタイのビジネスパートナーのPanuwat氏のものです。
ともすると自慢話になってしまいますが、そういうことではなく、現状頻繁に行われている、単に原材料的木材や、丸太を輸出するだけでなく、日本の仕口、木構造、納まり、デザインこそは、欧米の巨大な木材産業と戦うことはないです。僕がやってることなんて小さいけども、束になって掛かればそれなりに大きな勢力にもなる。日本の建築家のレベルも世界的に相当高いけど、わりと海外で戦おうとしていない。海外が全てとは言わんけども、人口減少社会で「仕事が減る!」と嘆く間に、何らかのアクションを起こせばいいと思う。僕たちのように地方の小さな材木屋ができるんだから、誰でもできる可能性はある。
僕達は、この10年程、タイを始め、韓国、チリ、オーストラリア、カナダ、アメリカ、デンマーク、フィリピンに焼杉を始め、「つくるシリーズ」の木建材を輸出してきました。本当に小さなビジネスですが、お客さんには本当に喜んでもらいます。ただ、国境を超えるビジネスでは、各地の建築基準、FSC、PEFC等について、経年変化について、大きな認識の違いを感じます。学ぶことは多いです。ただ、少しずつ積み上げていけることばかりです。
僕は、今一度、謙虚に初心に戻り、日本ならではの美意識や伝統技術、世界に類をみない高いレベルの木材加工技術、地震や台風に対する防御策、スギ・ヒノキといった木材の物性、匂い、杢目等々を学びなおし、材木屋として少しでも発信できればいいと思っています。僕らは一品料理屋で、マクドナルドのような巨大な会社ではありませんが、一品料理屋ならではのような、木材提供もあると思います。
次の物件や、バンコク市内の9mスパンの木造倉庫も来年2月頃上棟予定です。その他諸々の打ち合わせもしてきました。うしろの絵は焼杉で作ったパネルにガンダムが描かれています。タイの人は、日本のこととてもリスペクトしてくれているし、フレンドリーに思ってくれています。
「ここにしかないもの、あります」やっぱり、これに尽きると思います。
西下健治