僕は、3代目です。祖父が戦後間もない1948年に親戚から譲られる形で製材所を、近所の人、親戚の人と共同で始めたのが始まりです。その後まもなくその二人が抜け、祖父が一人で経営を始めました。時代が良かったせいもあり、もちろん人並み以上の苦労はあったとはいえ、仕事に事欠くことはなかったようです。僕が5月に生まれた11年後の1959年9月に、交通事故で突然祖父が亡くなり、父が31歳で祖父の後継となりました。それから1997年に父から社長を譲られ今日に至ります。
父は「それは大変やったけど、自分の思うようにして来れたという意味では、やりやすかった」と話します。1997年に社長を僕に譲ってから、基本的に父は経営に関してほとんど口をはさみません。「うまくやれよ」とは言い続けていますが、ほんとにそれだけ。これって、なかなか難しい事だと思います。僕が社長になった38歳なんて、今にして思うと「小僧」ですよ。心配で一杯だったんじゃないかと思います。でも、何も言わなかった。だから僕も父が「自分の思うようにやれた」と感じたように、僕も自分の思うようにやってきました。うまくいくにしろ、失敗するにしろ、全部責任は僕が追わなければいけないにしても、です。
僕の会社も少し人数が増えて30名を超えるようになってきました。そうなると、全てに僕が目を通すことが難しくなり、仕事を社員さんに任せていかなければいけなくなります。
ここからが本題です。20年を超えていろんなことに頭を突っ込み続けてきた自分が、何も言わず、誰かに任せることに耐えた経験がありません。頭も段々と頑固になってきている(?)。
今までは社内の様々なことにいちいち判断をしてきました。それもすぐに判断して支持することをしてきました。僕はまだ社長なので、社内のすべての成果の責任は僕にあると思うし、会社を良くしようと思うから、判断してしまう。
良し悪しは別として、ついいろんな事に気付いてしまい、「○○した方が良いんじゃない?」、「○○せいよ!」となってしまう。それって、やる気満々でやってる社員さんからすれば、面白くないですよね。かと言って放任するのはよくないとも思う。その匙加減を考え、奥歯を噛みしめ、口にチャックをしてものを言わない練習を繰り返す昨今です。ほとんど、修行です。結構一生懸命の修行です。
祖父みたいに、現場からいなくなるか、父みたいに何も言わないか。引き際の美学もありますよね。美しく、カッコいい「引き際」を何としても実現したいです。