共栄木材

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イチョウのベンチとカウンター

関西に新しくオープンするホテルのベンチとカウンターを納品しました。

ベンチは6,250x400x300㎜。依頼を受けてから、丸太を探し、製材して乾燥させ、塗装をして出荷するという手順で進めました。
うちは銘木屋さんではないので、特殊な木材をたくさん持っているわけではありません。当初、樹種を何にするかで、価格、入手の可能性、納期、そしてデザインについてもいろいろと検討しました。その中で「イチョウが良い!」ということになり、様々に探しましたが、6mのものはあっても、6.3mが無い。ところが声掛けしていた業者の一人から、「少し短いけど、あるよ」と連絡が入り、5㎝ほどの短さをお客さんに許容してもらいました。
さて、その後製材してきたこの大きなイチョウを、いかに表面割れを止めつつ、乾燥させるかということで、一つアイディアを出し、端口面も含めほとんど表面の割れはありません。裏面を大きくくりぬき、更に端口の直前までの芯の部分を錐でくり抜き、木材の応力を弱めることにしました。
ただ、それでも大きな断面の為に、表面の含水率は12%ほどになりましたが、断面内に水分が残っていると思われます。

そのあたりは説明をした上ではあったのですが、塗装をウレタンで仕上げました。
結果、内部の水分が逃げ場を失い、ブルーステインが部分的に出てしまいました。
いろいろと協議したうえで、仮オープンまであと3日というタイミングで、一旦表面のウレタンをカンナで削り落とし、自然塗料で木材の呼吸を止めないというやり方に変えることにしました。僕も愛媛から大工さんを二人連れて関西に走り、僕自身もかつて父親に教えてもらった経験で数十年ぶりにカンナでの削りを手伝いました。塗装屋さんも松山から翌日走ってくれました。イチョウのベンチはおそらくこれで落ち着くと思います。

答えのない、しかもすぐに手を加えなければいけない状況で、オーナー、デザイナー、塗装業者、そして我々を含め、みんなが責任の押し付け合いでなく、前向きな話をして頂けたお陰で、ものごとがどんどん進んでいきました。
何かを一生懸命にやっていても、はからずも…ということは起きます。僕自身も自分の知識と経験を総動員して、何とかしようと考えました。ともあれ、このチームワーク的なみんなの動きが、その取り組んでいることの大変さを超えて、「仕事って面白い!」って思いながらやってました。

この大変な思いをしたベンチに、世界中の人たちが座っていただけると思うと、材木屋って辞めれんなぁって、改めて思った次第です。このベンチ、時間が経過するほどにあめ色になり、美しい木に育っていきます。これからです。

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