先般、銀行の支店長が来られてお話ししていた時に、約束手形の話になり、うちの会社の売り買い両方ともほとんど手形が無いことの話題になり、こう話しました。
「僕は社長になって以来、売りにも、買いにもできるだけ手形を使わないようにしようと決めました。もちろんのこと、お金が潤沢にあるということではありません。ただ、長い商売をしていて、運悪く倒産の憂き目にあい、店をたたまざるを得なくなることがあります。それは僕の会社だけでなく、どの会社にも起こること。で、その時にひと月分であれば、長い付き合いの中で「ごめんなさい!」で、何とか済むけど、手形となれば、何か月も遡って負債が膨らむ。そうなると「ごめんなさい」では済みません。場合によったら連鎖倒産も起こり得ます。なので手側を貰うのはイヤ。当然うちが支払うお客さんも同じですよね。たったそれだけの理由で手形商売を少しずつ、少しずつ減らしてきました。」と。
手形支払いを止める時に、いわゆる「歩引き」というのが普通に要求されます。手形割引費用の代りに決済代金を値引くことです。みんながやってることではあるのですが、僕はそれを仕入れ先に対してやりません。請求書通り、そのまま支払います。その代わり「ちゃんと作って、ちゃんと売ってくださいね」と。結局、歩引きって最初は1%とか、儲かることになるかもしれませんが、僕は材木屋なので、金融で儲けようとは思いません。1,000円のものは、1,000円支払う。990円にしてくれとは言わない。ひどい歩引きをされたら、売る方だってバカじゃないから、そのうち1,000円のものを最初から1,010円に、場合によっては1,020円にするだけです。そんなことするくらいなら、ちゃんと1,000円払う方が気持ちいい商売ができると思うんです。青いのかもしれませんが、それでいいと思います。
自分と同じだけ、売り先も、仕入れ先も大切ですから。
そもそも、うちみたいな小さな会社は、いわゆる「与信」を多く求めることができません。なので現金で支払うことで「与信」枠なんてものが無くなります。海外取引の場合なんかは、出荷前の現金払いで大手と同様の価格で物が買えることが、ままあります。彼らには「与信枠」なんてものがありません。キャッシュ・オン・デリバリーの原則通りに商売を要求してきます。これって冷静に考えれば、原理原則ですよね。
この日本特有の手形制度も数年のうちになくなるようです。とても良いことだと思います。ともかく仕入れ先も、売り先も、うちもみんなが長く続く関係を大切にしたいです。偉そうに書いてしまいましたが、僕の本心です。
因みに僕の大学の卒論テーマは「白地手形の消滅時効について」でした。