共栄木材

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共栄木材の焼杉

1973年に弊社の先代が、当時あまり使い道のなかった杉の中目材利用に、昔からこの辺りで使われていた焼杉を機械生産したいと考え、思いつくままに機械屋さんと相談して作ったのが焼杉機の第一号。その焼杉は売れに売れました。ところが実はその機械には決定的な問題点がありました。板を送るローラーが、表面の炭を傷つけてしまうのです。「ならば、その表面の炭を落としてしまおう!」としてできたのが、「美杉」という商品です。結果的にこの商品は広く受け入れられ、メインの商品となり、地元は言うに及ばず、京都辺りでも住宅だけでなく、祇園当たりのお茶屋さん、社寺の外壁などでも随分使って頂き、ある意味で「京都の風景を変えた」と言っても過言でないほどになりました。

その数年後、焼杉の機械の送り装置、焼き方を根本的に作り替えた新しい焼杉機を開発しました。弊社の先代は、特許だの、意匠登録などといったものには全く気を遣わなかったために、多くの人にその機械を見せました。その後機械商さんを通じて主に西日本の各地に販売され、後発のライバル企業が相当数できました。もちろん、1円のお金ももらっていません。
その結果、価格競争が起き、各社価格を抑えるために、原板を9㎜、10㎜と薄くしてコストを抑える薄さ競争に突入することとなりました。とても大変な時期でしたが先代は、「外壁材として、せめて12㎜は必要。見た目で厚みがわからないからということで、これ以上の品質を落とすことはしない!」と決め、共栄木材の焼杉は他社より少し高いものとなりました。それでも、品質の良さを理解していただいた多くの得意先の方に支えられ続けました。

あわせて、抜け節問題。日本の山は枝打ち等の手入れがされなくなって、枯れ枝の上に年輪が巻いた丸太を製材すると、その枝の部分は必ず抜け節となります。
この死節、抜け節が歩留まりを限りなく悪くします。そこで共栄木材は、木材市場にお願いして、焼杉用の選別丸太を集めてもらうようにしました。実はここが他社との大きな違いかもしれません。
外壁である「焼杉」は雨にぬれ、陽に当たり伸縮を繰り返すと、抜け節を埋木処理や接着処理しても数年後には外れてしまうことが多いのです。ですから共栄木材では程度こそあれ、基本的に抜け節は各工程で選別して製品としておりません。
抜け節の板は、その他さまざまに利用していますが、これはなかなか大変なのです。
共栄木材は、数年前から板の厚みを、もともとそうであった5分板(15㎜)に戻し、標準品としました。板が厚くなることで、抜け節も抜けにくくなりました。
少し高くはなりましたが、歩留まりが上がった分は値上げしない方向で価格設定しました。原板を挽いてくれる製材所も歩留まりが向上したと喜んでくれています。高くなったといっても、窯業系サイディングと比較しても、全然高くありません。

時は移り、いわゆる窯業系サイディングの台頭があり、2000年頃から焼杉の売り上げは落ち込み始めました。防火性能は焼杉にはありません。ただの杉板です。
ところが一方で日本の焼杉が世界中の建築家の中で新しい(?)建材、しかもとてもエコで、価格もリーズナブル、そして何よりプリミティブな美しさがあると、評価され始めました。アメリカでは「SHO SUGI BAN」として生産工場もできています。「SHO SUGI BAN」は間違った言い方だと、その人たちに連絡を取っているうちに、「SHO SUGI BAN」ではないぞ、「YAKISUGI」というんやと、読み方も復権してきています。
そして共栄木材も直接的には、韓国、デンマーク、アメリカ、ハワイ、チリ、そしてタイと、輸出もするようになってきました。どの輸出先も量販型ではなく、建築家をはじめ、日本の美意識や伝統美を強く意識してくれる業者の方々です。

そして何より、日本の建築家の方々が、共栄木材の焼杉のストーリーや、品質の良さにご理解を頂いて、ずっと途切れることなく注文をして頂けていることに、本当に感謝しています。そのやり取りの中で、面倒なことを要求されることがよくあります。ところが、その面倒が新しい商品につながり、私たちの技術を深くすることに役立ちます。

焼杉は中目材の利用方法として、先代がふっと思いついた、単に焼いただけの外壁材です。先人の知恵の結晶の一つです。
日本中どこにでもある杉を使う、原料としてのサスティナビリティ、経済性、加工性の良さ、40年とも50年ともいえる耐久性、そして何よりも時間が経過してもその時々に感じる素朴な美しさこそが「焼杉」たる所以です。足しも、引きもせず、それでもいつも古いのに新しい「焼杉」をこれからも真面目に丁寧に作っていきたいと考えています。おおらかだった先代は、「焼杉の競争があっても、すそ野が広がると、高い山になるぞ。それで中目材が売れたら、山も喜ぶ。それでええんじゃないか?でも、うちの商品が一番売れたらええのう」と。先代の意思を受け継いでいかねばならないですよね!

「焼杉」だけでなく、杉板を厚くして外壁に使うのは、自然環境にも、地域経済にも、住む人にもとても良いことだと思っています。

焼杉の加工風景

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