3年ほど前に、焼杉をある若い建築家の自邸用で、デンマークに輸出しました。
その彼がコロナが明けて、やっと日本に来ることができ、うちの会社を訪ねてきてくれました。約3日間、焼杉工場を見学したり、物件を案内したり、共栄木材の「ここにしかないもの、あります」と、様々に紹介させてもらいました。
その中でいろんな話が出ましたが、デンマークと日本は様々な感性がとても似通っているように感じました。僕が彼から学ぶことも、彼が様々な商品や出来上がった建築を見て感じることも、双方たくさんありました。仕事のことだけでなく、食事や作業をしたりして、時間を共にすることで、ふっとした会話の中に様々な感性や、ものの考え方を共有することができました。
彼との話の中で「ヒューマンスケール」という言葉が出たのですが、この言葉が彼にとても深くフィットしたようでした。「起って半畳寝て一畳」っていう言葉もあります。日本人のDNAの中に、うまく言えないけど、自己の存在の大きさや小ささを謙虚に受け入れる感性があるように思います。そういった考え方が建築の形となって表れると、いわゆる「日本建築」が表現されるんだと思います。隅々にまで行き渡る思いやりが建築のディテールとなり、優しくかつ厳しい空間になる。それをささえる自然の木材。まだ若い建築家ですが、会話の途中、いろいろな感動で涙目になったことが何度かありました。日本の建築は素晴らしいし、日本の木材も素晴らしい。その建築としての発出には、謙虚さ、思いやり、厳しさ、全て土に還る潔さのような、深遠な哲学があると思います。決してデザインだけでなく、根本的な人間性が建築になって表れるんだと思いました。
その建築を支える材木屋の仕事、地味だけど、いい仕事です。
西下