ここ数年、海外からの焼杉の問い合わせが増えています。円安で日本のものが安く買えるということもあるのでしょうが、冷静に「なんで焼杉は、海外からも評価されるんだろう?」と思うことがあります。一部には過大評価を受けている節も感じます。
「表面の炭化層が木材を燃えにくくしている」という言葉がよく聞かれますが、決してそんなことはありません。表面の炭は簡単に火が付き、燃えます。
「熱処理されていることで、虫がこない」 一理はあると思いますが、裏面は焼けていないので、環境が悪ければ(高温多湿)、裏面にシロアリが来ることもあります。
「焼くことで耐久性が上がる」 嘘ではないですが、表面の話で、基本的には板の厚みが耐久性にはものを言うと思います。
焼杉を製造しているものがこういったネガティブなことを言っててもいけないのですが、事実は事実としてお伝えすべきと思います。
ただ一方で、それでも焼杉が、そこらにある木材で作られ、表面を焼くだけという極めてプリミティブな製造方法で、表面の炭は30~40年以上という結構な時間をかけて徐々に剥落していきその間美しさを保つ。なにより、単に焼いただけの表面の炭の黒い色そのものが、美しい。
よく海外の人とかに、こう尋ねられます。「表面の炭はどれくらい持ちますか?炭が落ちたら、どうなるの?」と。
僕は、「日本での経験的に言うと、うちの焼杉は約30ー40年、もっと持ちます。ただ、徐々に剥落し、下地の木の色がシルバーに変色していきます。ただ、その経年のさまそのものが美しいと思うんです。古びたものには古びたものの美しさがある。もちろんそれは全くほったらかしということではないですが、経年変化を受け入れる気持ちが大切じゃないかな?50年経てば、その焼杉を作った時に伐採し再植林した木が、焼杉に使える程度の大きさに育っています。だから自然が無理なく循環できるんです。美しくもあり、地域経済性もあり、自然のサイクルの理にかなったものなんですよと。」
そこで、僕のお客さんたちは納得し、僕の会社の焼杉を買っていってくれます。
もう一点、世間では「Sho Sugi Ban」っていう人たちがいますが、あれは間違った呼称です。「Yakisugi」が正しい日本語です。今後は必ず「Yakisugi」と呼んでくださいね。これは、僕の個人的な戦いです。嘘の名前で「焼杉」を広めてほしくない。「Sho Sugi Ban」なんてバッタもんですよ!日本の誇るべき「焼杉」です。
ともあれ、タイ、チリ、韓国、オーストラリア、デンマーク、アメリカ、カナダそして今回のマレーシアと、各地の気候に合わせて多少のアレンジをしながら、単に商売がどうのっていうことでなく、「焼杉」を通して、顔が見え、価値観を共有できる人たちに出会えることが、とても嬉しいです。焼杉以外にもいろいろと日本には普通の良いものがたくさんあると思います。少しずつ、広げていきたいです。
焼杉を通して、昨日はマレーシアの人と知り合えました。彼もとてもスマートで紳士で、美意識が高いけども人として垣根の低い、愉快な人柄でした。
西下